最近のニュースで「台湾有事(たいわんゆうじ)」という言葉を耳にした人もいるかもしれません。その中で、高市早苗首相は国会で「日本が存立危機事態(そんりつききじたい)になる可能性がある」と答弁しました。
※2025年11月7日の衆議院予算委員会での答弁
難しい言葉ですが、実はこれ、日本の平和と国民の命をどう守るかを決めておく「もしもの時のルール」なんです。今回は、この「存立危機事態」について、子どもでも大人でもわかるようにやさしく説明します。
この記事の目次
そもそも「存立危機事態」ってなに?
「存立危機事態(そんりつききじたい)」とは、かんたんに言うと日本が生きのびるためにどうしても守らないといけない状況になった時のことです。
日本と密接な関係にある国が武力攻撃を受ける。
その結果、日本という国そのものが危なくなり、国民の生命・自由・幸せに生きる権利が根本から壊される明らかな危険がある、というとても重い場面のことを指します。
ここでポイントになるのは、日本が直接攻撃されていなくてもそのまま放っておくと、日本の平和や命が本当に危なくなる場合には「存立危機事態」と認定されうるという点です。
ただし、何でもすぐに「存立危機事態」になるわけではありません。
政府は、「他にもっと軽い手段で守れる方法はないか」「本当に武力を使わないと国を守れないのか」などを総合的に判断し、最後の最後の手段としてだけ認められる仕組みになっています。
「新三要件」ってなに?武力を使うための厳しい条件
「存立危機事態になれば、すぐ武力行使OK」というわけではありません。実は、武力行使には「新三要件」と呼ばれる厳しい条件があります。武力行使が認められるには、つぎの三つをすべて満たす必要があります。
- 日本の存立が脅かされ、国民の生命・自由・幸福追求の権利が根底からくつがえされる明白な危険があること
- それを防ぐために、他に適当な手段がないこと(話し合い・外交・経済制裁などでは守りきれない)
- 必要最小限度の実力行使にとどまること
この「三つ全部そろったときだけ」というのが大事なポイントです。
つまり、「ちょっと不安だから先に攻撃しておこう」「同盟国が攻撃されたから、とりあえず一緒に戦おう」といった理由では、武力行使は認められないという考え方になっています。
「新三要件」は、できるだけ武力に頼らず、どうしても必要なときにだけ、最小限で使うための強いブレーキ役だと考えることができます。
「重要影響事態」とどう違うの?
似た言葉に「重要影響事態(じゅうようえいきょうじたい)」というものがあります。
これは、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態だけど、日本の存立がすぐにくつがえされるほどではない段階といったイメージです。
この「重要影響事態」では、自衛隊が他国軍への後方支援(物資の補給、輸送など)をすることはできますが、自分たちから武力を使って戦うことはできません。
一方、「存立危機事態」はそれよりも一段重い、もっと深刻な状況です。
さきほどの「新三要件」をすべて満たした場合には、日本が直接攻撃されていなくても、自衛のために必要最小限度の武力行使が認められる可能性がある段階です。
ざっくり言うと、
重要影響事態 → 影響は大きいが、主に後方支援までの段階
存立危機事態 → 日本の存立そのものが危ない、最終ラインに近い段階
という関係だとイメージするとわかりやすくなります。
なぜ台湾の話で「存立危機事態」が出てくるの?
台湾は日本のすぐ近くにあります。もし台湾で大きな争い(台湾有事)が起きれば、
■ 日本の周りの海の交通が止まる。
■ エネルギーや物資の輸入が難しくなり、日本の経済に大きな影響が出る。
■ 日本周辺の安全も不安定になり、日本自身が巻き込まれる危険が高まる。
といった問題が生まれます。
ニュースで報じられたように、高市首相は、台湾とフィリピンの間にある海峡が、軍艦などによって封鎖され、日本の重要な海上交通路に大きな影響が出るケースについて、「武力の行使を伴うものであれば、存立危機事態になりうるケースだと考える」といった趣旨の答弁をしています。
ここで大事なのは、
■ 今すぐ日本が戦争すると言っているわけではない。
■ 戦争を望んでいる発言でもない。
「法律上、どういう場合に存立危機事態と判断される可能性があるか」を説明したという点です。
首相や政府には、どんな場合に日本がどれだけ危なくなるのか、そして、そのとき法律上どこまで対応できるのかを、国会で問われた際には可能性を含めて説明する責任があります。
高市首相の発言も、「台湾有事をきっかけに、法律上は存立危機事態と認定されうる場面もあり得る」といった、ルール上の説明を行ったものと理解するのが自然です。
勘違いしてはいけないこと
ここまで見ると、「じゃあ、存立危機事態って平和のためのルールなんだね。戦争とは関係ないんだね」と感じる人もいるかもしれません。
しかし、ここは少し丁寧に整理しておきたいところです。
存立危機事態は、戦争を始めるための合図ではありませんが、日本が直接攻撃されていなくても、自衛隊が武力を行使できるようになる非常に重い状態であることも事実です。
どんな場合に当てはまるのか、本当に他に方法がないのか、国会でのチェックや「新三要件」という歯止めをどう機能させるかといった点が今も大きな議論になっています。
つまり、戦争と「まったく関係がない」わけではない、しかし「戦争をやるために作られた仕組み」でもないという、とても微妙で重要な位置づけにあるのです。
だからこそ、ニュースを見る私たちも、不安だけで判断するのではなく、「日本を守るための最終ライン」という側面と「武力行使につながる重い判断」という両方の側面を、落ち着いて理解することが大切になります。
まとめ
「存立危機事態」とは、日本と密接な関係にある国が攻撃され、その結果、日本の存立と国民の権利が根本から危険にさらされるような、とても重い事態のことです。
この状態になると、日本が直接攻撃されていなくても、自衛のために自衛隊が武力を行使できる可能性が出てくる最終ラインの判断基準となります。
その際には、「日本の存立が脅かされる明白な危険があること」「他に適当な手段がないこと」「必要最小限度の実力行使にとどまること」という「新三要件」をすべて満たさないと、武力行使は認められません。
また、「重要影響事態」は主に後方支援までの段階であり、「存立危機事態」はそれよりも深刻な状態であることも押さえておきたいポイントです。
高市首相の発言は、「台湾周辺での深刻な事態が、日本の存立危機事態に当たりうるケースもあり得る」という法律上の可能性を説明したものであり、戦争を望む宣言ではありません。
子どもにも大人にも大切なのは、これは不安をあおるための言葉ではなく、「日本をどう守るのか」「どこまで武力を認めるのか」をめぐる、とても重要で慎重なルールの話だということですね。
























