日本には、感謝の気持ちを贈り物に託して伝える美しい習慣があります。その代表が「お中元」と「お歳暮」です。どちらも贈答文化の中核をなす行事ですが、意味や贈る時期、歴史などに違いがあります。今回はその違いや由来、基本的なマナーについてわかりやすくご紹介します。
この記事の目次
お中元の基礎知識と由来
お中元を贈る時期は?
お中元は夏のご挨拶として贈られますが、贈る時期は地域によって微妙に異なります。送る相手の地域の慣習に合わせることが大切です。
地域 | お中元を送る時期 |
---|---|
東北・関東地方 | 7月1日〜7月15日ごろ |
北陸地方 | 7月15日までに届くように送る |
北海道・東海・関西・中国・四国地方 | 7月15日〜8月15日ごろ |
九州地方 | 8月1日〜8月15日ごろ |
遅れてしまった場合は「暑中御見舞」や「残暑御見舞」として贈るのが一般的です。
お中元の意味は?
お中元は、日頃の感謝を伝える夏の贈り物です。家族や親族、職場の上司、取引先など、お世話になった相手に「いつもありがとうございます」という気持ちを表します。
お中元の由来は?
「お中元」という言葉は、中国の道教にある「三元(上元・中元・下元)」のひとつ、中元(旧暦7月15日)に由来します。この日には祖先を供養する風習があり、日本では仏教の「盂蘭盆(うらぼん)」と融合して、贈答の文化が生まれました。江戸時代になると、庶民の間にも夏の贈り物として広まり、今のようなスタイルになったと考えられています。
お中元の金額相場
一般的な相場:3,000円~5,000円程度
特別にお世話になった方へ:5,000円~10,000円程度
贈りすぎると相手に気を使わせてしまうため、高額すぎないことがポイントです。
お歳暮の基礎知識と由来
お歳暮を贈る時期は?
お歳暮は、年末のご挨拶として贈る品であり、「遅くとも年内に届く」のが基本的なマナーとされていますが、地域ごとに少し違うため送り先の地域に合わせて贈るとよいでしょう。
地域 | お中元を送る時期 |
---|---|
北海道・北陸・九州 | 12月13日 ~ 12月20日ごろ |
東北・東海・中国・四国 | 12月13日~12月25日ごろ |
関東 | 12月初旬 ~ 12月31日ごろ |
関西 | 12月13日 ~ 12月31日ごろ |
12月13日は、かつて「すす払い」として正月準備が始まる日とされており、お歳暮の贈り始めの基準となっています。
お歳暮の意味や目的は?
お歳暮は、「1年間お世話になったことへの感謝」と「翌年のご挨拶」を込めた贈り物です。お中元よりも「フォーマル」な位置づけで、ビジネス関係では特に重視されます。
お歳暮の由来は?
お歳暮は日本の年越し行事に由来し、もともとは年末にご先祖様へ供える「御霊供(みたまく)」を実家に届ける風習でした。それが次第に、親戚や取引先への贈答文化へと変わりました。
お歳暮の金額相場
一般的な相場:3,000円~5,000円程度
特別な相手には:5,000円~10,000円程度
なお、お中元よりも少し高めの品を贈るケースもあります。
贈り物の選び方とマナー
お中元やお歳暮を贈る際には、ただ「物」を選ぶのではなく、相手の立場や家族構成、好み、季節感、関係性などに配慮することが大切です。ここでは、具体的な選び方とマナーについて詳しく解説します。
相手に合わせた品選びのコツ
贈り物は相手のことを思いやって選ぶのが基本。以下に例をあげてみます。
相手に喜ばれる品を選ぶポイント | ||
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贈る相手 | おすすめの品物例 | 注意点 |
家族・親戚 | 食品セット(そうめん・果物・ハム)、ジュース、調味料セット | 家族全員で楽しめるものが喜ばれる |
職場の上司 | 高級お菓子、老舗ブランドの品、コーヒーセットなど | 高価すぎず、上品な印象で |
取引先・顧客 | 地元の特産品、名のある商品、ブランド品の詰め合わせ | 贈答ルールに従い、社名記載 |
高齢者の方 | 体に優しい食品、柔らかい食材、お茶セットなど | 好みやアレルギーにも配慮 |
一人暮らしの相手 | 個包装のお菓子、日用品セット、レトルトや缶詰など | 量が多すぎないよう注意 |
熨斗(のし)と包装の基本マナー
- 水引(みずひき):紅白の「蝶結び」(何度でも結び直せる=何度あっても良い)
- 表書き:
・お中元 →「御中元」
・お歳暮 →「御歳暮」 - 贈り主名:フルネームが基本。会社宛ての場合は「◯◯株式会社 ◯◯部 ◯◯様」宛てに
- 包装紙・風呂敷:贈答専用の上品なものを。最近ではエコ対応の簡易包装も増加
手渡しと配送、どちらが良い?
- 手渡しできる距離なら、手書きの一筆箋を添えて直接渡すのがベスト。
- 遠方の場合は百貨店やネット通販から配送するのも一般的です。
- 配送時は、挨拶状(お礼状)を郵送やメールで別途送ると丁寧です。
あとがき
「お中元」と「お歳暮」は、日本独自の感謝を形にする文化です。現代では形式にこだわりすぎず、相手との関係や生活スタイルに合わせて無理のない範囲で行うことが大切です。ちょっとした贈り物でも、そこに心がこもっていれば十分伝わるもの。ぜひ、自分らしい感謝の形を見つけてみてください。